アドバイスコーナー

統合失調症でもクローズで就職したAさん

精神保健福祉士のchiroです。私が2年前に訓練施設で支援するようになったAさん。ついに半年前に障がい者を伏せての就労いわゆるクローズで就職を決め現在も継続されています。
生活保護も切れお金を貯めて夢を実現させようとしています。周囲の人には無理だと思われながら実現できた理由を紐解いてみます。

入院から訓練施設に通うまで

Aさんは地方の地元で資格を取得し、就職先が多いとのことで都市に出てきてて資格を活かした仕事について15年以上働いていました。シフト勤務の業界なので、仕事がオフの日にはダブルワークをして、普通のサラリーマンよりも多い収入がありました。

30代半ばまでは頑張れていたのですが、長年の無理がたたり体に不調をきたして精神的に病んでしまいました。妄想からくる行動、言動で警察沙汰の事件も起こし精神科に入院。

入院当時を知る人は今のAさんを想像できないくら、暗く、おどおどしていたと言っていました。

統合失調症のお薬は年々新薬が開発され副作用が少ないものに変わっていることもあり、主治医の先生の判断で新薬に効果的に変えていきました。

1年ほどで退院されましたが、入院前に投資に失敗して借金を抱えたため、破産処理し住むところもなくなり生活保護を申請し住居も探してもらってゼロからのスタートです。

病院のデイケアに通いながら生活のリズムを作り、お金も生活を切り詰めながら質素な生活です。でもAさんには”また働いてお金をためていろんなところに旅行をしたい”という思いがありました。

Aさんは全都道府県を旅行することが夢でした。まだ数か所行けていないところがあります。でも生活保護のままではお金が足りず、早く働いて夢を叶えたいという思いがありました。

主治医からは”焦らないように”と助言されていましたが、Aさんは焦っていました。

主治医から”作業所から始めてはどうか”と言われ、近くの作業所に通うようになり、その時、私もAさんと出会いました。

毎日作業所に通ってくるAさんに”頑張っているね”と声をかけると、
「家に居ても電気代かかるし、作業所に来てたほうが出費が減るから」と
出費に関しは徹底していました。
いつも先月の電気代は1000円切ったとか自慢されていました。

ステップアップ

作業所に通いだして1年半ぐらいのときに、併設で就労を目指すための訓練施設である就労移行支援事業所をすることになり、Aさんは第1号のメンバーになりました。

ただしAさんには課題がありました。集中力に欠けていて1時間ほど作業をすると、すぐ休憩に入ってしまいます。また人とのコミュニケーションは好き嫌いが激しく、好意を持っている人には距離感が近く、合わない人とは会話もせず拒絶してしまいます。

就労移行支援事業所では(1)体力をつける。(2)どんな人とも協調性を養う。の2点をAさんの訓練課題にしました。

清掃の作業、資料の入力の作業、短時間で終わる作業が多かったですが、工賃にもなるので、Aさんは真面目に取り組んでしました。

早く仕事がしたいとの思いもあり、まだ早かったのですが、本人の希望で3か月目でハローワークに登録。

障がい者の合同面接で障がい者雇用の1社に応募。結果は不採用。面接で「どうしてうちの企業を選んだのか」との質問に答えられませんでした。

クローズで求人サイトに登録

自分で思ったら行動に出てしまうAさん。

ある日、ネットの求人サイトに登録したと報告を受けました。クローズ(非開示)はメリットもあるけどデメリットもあることは説明していましたが、本人は”大丈夫”と。

↓クローズとオープンのメリットデメリットについてはこちらの記事をご参考ください。

障がい者の就職 オープンとクローズの違い

 

主治医の先生にはお伝えするように助言。

ネットの求人を通して4社、5社書類選考で落ちて、6社目は面接までいったものの、本人から辞退。7社目で少し通勤が遠いが本人も資格を活かせるとのことで面接に挑み採用決定通知が来た。

当然クローズなので、”これはできません”とか言えないのですが、極力できないことはできないと言うように伝えました。

試用期間も終わり正式採用

はじめは1週間くらいで根を上げるかなと思っていましたが、2週間、3週間過ぎ、しんどいと漏らすこともありましたが、休まず通勤されていました。

精神科の通院も休みに合わせて通院するように変更し途切れないようされました。

またオフの日にはデイケアにも行ってリズムが崩れないようにされています。
この前、残りの都道府県の旅行に行けたと報告がありました。

Aさんのケースからわかること

Aさん成功の裏には
(1)デイケアや作業所に休まず通えていた。
(2)主治医をはじめ相談する人が近くにいた。
(3)隠さず本当のことを言ってくれた。
があると思います。

そして周りの支援者が
(1)本人の可能性を信じてあげた。
(2)選択は本人にさせてあげた。
だったと感じます。

支援者は危なっかしいと思ったら方向を修正しようとしますが、ある意味失敗も勉強になり、気づきになります。何もさせないのではなく、どちらを選ぶかは本人に決めさせてあげることが大切です。

支援者としてしたことは本人の状況を聞いてあげ必要な助言をしてあげること。無理をしてそうだったら、少し休むことも大切と教える。頑張っていたら、頑張れていることをほめてあげる。

ちょっとしたことかもしれませんが一人にさせない。本人の可能性を信じてあげることが大事と思っています。

統合失調症になっても週間リズムが生活リズムが安定していればクローズでも一般就労ができることをAさんから教えていただきました。

第1号の就職者となったAさん 2か月後には生活保護から脱し、本当の自立を開始されまし
た。

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